■第12回「秋田酒屋唄を飲む会」体験記
 大吟醸「酔楽天」で有名な、秋田酒造の「秋田酒屋唄を飲む会」に参加してきた。「酉元(もと)仕込み」「米とぎ」「酉元(もと)すり」の蔵人体験である。酒屋唄を唄いながらの、文字通りの手造りで、楽しくお酒の仕込みのお手伝いを出来たと思う。
 今まで、何度と無く参加したかったのだが、その参加できない理由がマスコミの取材にあった。それは、マスコミ人はそれに取材されてはならないという不文律である。だから、そう言う場面に遭遇すると、カメラの裏側に逃げまくっていたのである。それが定年によって、規制が解けたから参加できたのである。
●2005/1/16(日)
 7:50  朝8時40分集合というのに、50分前の7時50分に起きてしまった。毎日が日曜日の生活で、すっかり朝が弱くなっていたのである。
 
 8:45  いくら歩いて10分の場所いえども、顔を洗って・ひげを剃って・着替えて・朝食・出発準備では間に合わなかった。あいにくのボタ雪が降りしきる中、ラクダの股引ならぬ厚手の下着を重ね着して、長靴の重装備の出で立ちで向かったが、歩いても歩いてもなかなか着かない。店がある正面玄関ではなくて、左横の小路から直接蔵に向かったら、受付があった。最後の人ではなかったが、座ったとたんに社長の挨拶が始まった。社長から蔵のスタッフが紹介された。司会者・杜氏・専務・女将さんである。専務は女性で、私の後継者だという。最近よくあることである。
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正面玄関/店舗
●秋田晴  秋田酒造(株)
〒010-1631
秋田市新屋元町23−28
 
 9:00  まずは、一同酒蔵内の松尾神社に参拝する。酒屋の神様である。洗面器で手を消毒して、酉元(もと)仕込みから始まる。釜場では、すでに蒸し米が終わっていて、湯煙を上げていた。これをタンクまで運ぶ桶を「ぶち桶」と言う。肩に担いで一気に走り、ムシロの上にぶちまけたことから、「ぶち桶」と名前が付いたらしい。これの担ぎ方を蔵人が実演。参加者は空のタンクを肩に担いで、形だけチェックする。本番では、米の量を少なめにして貰って、約10m先のムシロならぬマットにぶちまけた。4〜5人で蒸し米をかき混ぜて冷やす。適当に冷えたところで、仕込み水と麹が入れてあるタンクに入れる。75Kgの蒸し米を、10回ぐらいに分けて行った。
釜場
「ぶち桶」 蒸し米を冷やす
仕込みタンク
 この作業をするのは、過去の会でもなかった初めてのことらしい。今は、ベルトコンベアー式の機械があって、釜場から蒸し米をクレーンで持ち上げ、幅広ベルトに流し込むと、大型扇風機が回って冷やされる。この時の釜場の寒さが功を奏するのである。あとは、ザルに入れてタンクまで運ぶのである。「天の戸」で見せて貰った。
 
 37名が参加したが、2/3が何度目かの参加者で、1/3が私を含めて初めての参加だと言う。住所は殆どが秋田市で、それ以外は5名程度であるが、埼玉・札幌・盛岡から参加した人もいた。
説明を受ける会員たち
 
10:00  場所を、直ぐ隣の西部公民館に移った。町内活動でよく使うところだが、久しぶりである。川口社長による酒造りの説明から始まった。行程に従って、いろいろな用語が出てくる。精米・洗米・蒸し米・麹・酵母・酉元(もと)・醪・上槽・火入れ・貯蔵・濾過・瓶詰め〜〜などである。これについて説明してくれた。現場をよく知らないので、関連がなかなか付かない。
社長による酒造りの説明
 
11:00  休憩のあと、利き酒を始めた。まずは名前の入ったお酒を5種類飲む。純米酒「ヨーイトナー」・超辛口「どっ辛」(白)・春雪生・純米酒「古式純造り」・吟醸酒「丸丁三」である。このあと、無記名のお酒を飲んで、さっきのどれかを当てるのである。はじめの5種類は、良く味が分かったつもりだったが、無記名に入った途端、どれも同じ味になってしまった。飲み込んだのが、行けなかったようである。全滅!! 今度は、いきなり無記名を飲んでみようか? 無謀か?
 
11:30  午後からの仕込みで唄う酒屋唄の練習を始める。指導役は蔵の工場長。40年前に両関に居たことがあるとかで、かなりの年配の方のようである。私は、民謡番組に28年間関連していたので、「秋田米とぎ唄」は直ぐ唄えたが、酒屋「櫂入れ唄」は忘れていた。湯沢の全国酒屋唄競演会でよく登場したのである。
 
12:00  新屋の某仕出し店の弁当で昼食。食べ終わったところで、先ほどの利き酒に出てきたお酒を振る舞われた。午後からの作業に影響があるとかで、あまり飲む人はいなかったが、私は一杯だけ飲んで、あとは仕込み水でごまかした?!
 
12:50  西部公民館から蔵に戻る。手消毒を行ってから、「米とぎ」の作業に入る。一番前に出て待っていたら、酒屋唄の唄い手にされてしまった。5人の内の一人である。精米された米10Kg位を、半切りの桶に入れ、冷たい仕込み水を入れて、二人一組で2組が「秋田米とぎ唄」に合わせて手で研ぎ出す。私もやってみたが、冷たくて二番の歌詞まで永かった。二度目はそんなに永くは感じなかったが、三番の歌詞までやられたら手が凍りそう。四番までやることはなかった。初添え分の280Kgをやったのだろうか?
「米とぎ」
 
★録音をクリックすると、唄が再生されます。
▼秋田米とぎ唄 〜録音
 
∧米とぎの ヤーヨエ 始まるときは
 鶴と亀 鶴亀がヤーヨエ
 流しに降りて舞い遊ぶ
 (ヨエトコーリャ 舞い遊ぶ)
          (囃子以下同じ)
 
∧米とぎは ヤーヨエ 楽だとみせて
 楽じゃない 寒中にも ヤーヨエ
 はだしに裸 楽じゃない
 
∧十七八 ヤーヨエ 柳の下で
 せりをつむ せりつめば ヤーヨエ
 柳がよれて からまるよ
 
∧つばくろが ヤーヨエ 酒屋の破風に
 巣をかけて 夜明ければ ヤーヨエ
 酒こせ売れと さえずるよ
 
14:00  休憩しながら、少し暖を取っていたら、マスコミ各社がやってきた。今度は、「酉元(もと)すり」の作業に入る。午前中に蒸し米を入れたタンクは、水を含んでおかゆ状態になっていた。これをさっきと同じ「半切りの桶」に入れ、二人一組で2組が酒屋「櫂入れ唄」に合わせて、棒で擦り出す。これは四番まで唄わないと、糊状にならない。これを「試桶」に入れて、蔵のタンクまで担ぎ出す。私もやってみたが、櫂入れは意外と重労働。終わったら、体が固まってしまった。必死になって作業をしてたのだろう。「試桶」は、最後の番とあって量がきわめて少なくて助かった。
「酉元(もと)すり」
(秋田さきがけ新報より)
「試桶」
 
★録音をクリックすると、唄が再生されます。
▼酒屋「櫂入れ唄」 〜録音
 
∧揃た揃たヨー 若い衆が揃た ハイハイ
 秋の出穂よりヨー まだ揃た
 (ヨーイヨーイ ヨイヨイヨイ
  アリャリャン コリャリャンデ
  ヨーイトーナー)
          (囃子以下同じ)
 
∧よいにもとする 夜中にふかし
 朝の夜明けに 酒つくる
 
∧これは大切 改良の仕込み
 頼みあげます 松尾様
 
∧千秋楽とは まだまだ早い
 まずは ここらで 納めおぐ
 
 ★録音は、よく記者会見などで登場するICレコーダーで行いました。
15:15  今日の作業は、これですべて終わった。このあとも蔵人によって、初添え・仲添え・留添えのいわゆる三段仕込みが行われる。酒屋のハッピとタオルを返して、おみやげに去年仕込んだ「ヨーイトーナー」を貰って帰った。これの搾りは、3/6(日)に行われる。
 ★この模様が、写真付きで「秋田さきがけ新報」の新聞に載った。1/20付朝刊、11面の秋田市地方欄である。
Ksymbol
 ★アルバム風写真集(「秋田酒屋唄を飲む会」会員限定)
 ●2005/3/6 『第12回「秋田酒屋唄を飲む会」ヨーイトナ上槽・しぼりたてを楽しむ会』体験記
 次は ●2004/10/30〜31 東京・蒲田/講演会紀行